つつみ内科・皮ふ形成クリニック|福岡県柳川市|美容皮膚科・美容外科 、皮膚科、形成外科、内科、消化器内科、物忘れ治療

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20240706夏と海

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”認知症コウノメソッド ”1例をもとに

20240512診療ブログ
最近、臨床的なブログを挙げてませんでしたので、久しぶりにこちらを書いてみます。2011年頃からですので、認知症診療をするようになって10年以上になります。認知症は、糖尿病・脳梗塞後などの内科疾患やサルコペニアやロコモ(運動器症候群)の整形外科疾患とも関連します。長寿と関連する3本柱が「心腎疾患」「ロコモ」「認知症」と発表されていたのは昨年の抗加齢医学会だったかと思います。
以前から訪問診療をしていますが、当院でフォローさせてもらっている認知症の患者さんを例に、最近の当院の認知症のフォローについて書いてみます。外来で認知症治療をしていた患者さんで、外来通院が困難となり訪問診療で治療するようになった患者さんです。「日中はデイサービス等を利用され、食事の自力摂取が可能な間は、ご家族と過ごされる」というのは、よくある形です。コウノメソッドの3本柱は、「介護者保護」「家庭天秤法」「サプリメントの活用(保険診療に限定しない)」です。介護者保護というのは、認知症の方に介護は欠かせないものですので、介護する人の価値観や方針を重視し、介護者が疲弊しないようにしていくというものです。家庭天秤というのは、常に身近で観ている介護者が、薬の量の調整などに関わっていくというものです。介護者の認知症に対する経験値が上がるため、認知症診療の現場第一主義が日常の中に浸透していきます。今回の患者さんは、これまたよく見られる流れですが、肺炎を契機に治療の目的で病院に入院となりました。病院では抗生剤等の点滴がメインとなり、しばらく絶食という状態になります。炎症が改善し、食事を開始しますが、高度の認知症の方の場合、その時点で嚥下や食事量が改善しない場合も多々あります。私も以前勤務医でしたので、よくわかりますが、主治医として悩む場面です。
病院に紹介して、ご家族から度々相談も受けていましたが、入院して2か月ほど経ち、点滴も外せないという状況とお聞きしていましたので、自力摂取のための最善の策を打ち出さねばジリ貧ではないかと思っていました。しかし病院での主治医ではありませんので、ご家族には「退院されたなら、出来る範囲での加療はさせてもらいます」と申し上げました。入院時点で認知症が重症の場合は、アパシーと言う意識の覚醒度そのものが第一の課題である場合も多く、認知症的改善も視野に入れた上で全身を捉える必要があります。そのような意味では、私が病院の主治医なら一度は胃瘻造設の話をさせていただくかと思います。造設するかしないかによりさらに次の一手が決まってきます。今回の方の場合は、「主治医から胃瘻の話はなく、意識の覚醒度もどんどん下がっているジリ貧の状態です」というご家族の回答でしたので、「ご家族が”あとは自宅でフォローしてもらう”という意向を主治医に対して決断されれば、出来る範囲の治療を当院ではやってみます」、とお返事した次第です。数日して、このまま病院で亡くなるくらいなら自宅の方がまだ良いという達観した視点もお持ちで、退院を決断されました。そして当日から当院での訪問診療を開始しました。
しかし退院日に診察に行くと、呼びかけにもあまり反応がないほどの覚醒度で、長期に渡る1日1本の病院での点滴のためか、上肢は点滴ルート確保も非常に困難な状態でした。このような場合は、まず覚醒度を上げる必要がありますが、栄養状態含めた全身状態との兼ね合いもあるため、その優先順位を即断します。このまま少ないカロリーの点滴(訪問診療では限界)が維持できたとしても、まさにジリ貧状態でした。以前お世話になった病院の外科に相談し、胃瘻造設を行ってもらう方針に転換しました。有難く積極的に行っていただき、再び自宅へ戻ってこられました。退院時には「もう食事は摂れないと思いますので、胃瘻をご家族で頑張ってください」と言われたとの事です。それも想定内でした。私がコウノメソッドを知らなかったなら、同じコメントを言っていたかと思います。しかし自宅に帰られた時に、採血で軽度の炎症はありましたが、無事に胃瘻からの経管栄養が行える状態にはなっていましたので、これからがコウノメソッドの真骨頂だという気持ちもあり、ご家族も”出来る範囲の治療を当院にお願いしたい”という意向でしたので、投薬内容、注射、さらには特殊治療など様々な方法を行いました。それらは2024年時点で、当院で行える範囲という条件ではありますが、コウノメソッド最先端の治療です。先ほど書きましたように、最も重視したのは、覚醒度を上げる事、そしてそれを維持する事です。自宅に戻られた時に小さな床ずれができた場面もありましたが、訪問看護によるフォローや私の形成外科の経験等で徐々に改善し、今は予防第一という状態まで改善しました。四肢の拘縮予防のために、理学療法士の方の介入を促し、退院して1カ月としない間に、言語聴覚療法士さんの介入もお願いしました。便も安定、胃瘻栄養も安定、意識の覚醒度も安定という状況の中での話です。嚥下がどこまで回復するかのリハビリの挑戦です。肺炎で最初の病院に入院してから、次の病院で胃瘻を増設し、自宅に戻ってくるまで3カ月。そして胃瘻栄養も安定し、意識の覚醒度が維持できるるようになってそろそろ4か月になろうとしていました。
5月初旬に採血を行いましたが、栄養状態は肺炎で最初の病院に入院する以前の状態まで改善しています。さらにご家族のお話では、覚醒度も以前のように維持できているとの事です。となると、あとは嚥下がどこまで回復するかが最大の課題になります。今現在は、アイスクリームを食べれるという状態まで回復されています。言語聴覚士の方の介入後2~3カ月を目途にその方のゴールを設定し、それを維持していくのが目標になりそうですので、それを支える認知症的側面、内科的側面が悪化しないようフォローしていく方針となります。
入院前のような食事摂取までは無理かもしれませんが、この方の一連の流れの中に含まれる大切なポイントというのをブログを読まれる方には理解していただきたいと思います。ご高齢の方の回復は時間との闘いです。重症認知症の場合はなおさらです。胃瘻を増設するか、しないかで全く方針が変わります。造設するなら、時期を逸しないで行うことが大切です。自力摂取も念頭に置くのなら、早期造設、認知症的側面の積極的治療が必要になります。そこには介護者であるご家族の意向が大きく関わります。セカンドオピニオンは、このような重症認知症を伴うご高齢の方に必要な場合もあるかもしれません。
今回は、コウノメソッドの具体的な治療法そのものは書いていません。以前のブログに書きましたように、河野先生はYoutubeで「ドクターコウノの認知症動画」として発信されています。方法論は、以前はオープンにされていましたが、諸事情により現在は「コウノメソッドメディカルクラブ」内で発信されています。佐賀県で最初にコウノメソッド実践医になった頃は、患者さんやそのご家族からいろいろと学ばせてもらました。短期記憶は悪くなっても、戦前戦時中の話は覚えておられる場合も多く、生きる姿勢のようなものが垣間見れ、自らを振り返るのに有難い診療になっていた感があります。まだ物忘れ外来のホームページは修正していません。早めにとは思っています。余談ですが、1年で1人に300万以上もかかる認知症治療薬が認可されているようですが、皆さんどう思われますでしょうか。国のお金の使い方、ちょっとなあと思います。”家計が苦しいのにドラ息子に高級車勝ってあげる”感が否めません。
2024年05月12日 15:32