腋臭の手術(皮弁法)について
グロテスクであまり説明ページには載せていませんが、当院での腋臭症の皮弁法について、ブログの方に説明を書いてみます。皮弁法は皮膚の裏にあるアポクリン腺を切除する方法ですが、術前に切除範囲を点線でデザインします。そして皮弁の裏にアプローチするための切開ラインを実線で縦に引きます。勤務医の頃は、この切開ラインは2本引いていたのですが、縫合や圧迫固定の方法との兼ね合いで、現在は1本の切開ラインとしています。切除する範囲全体に局所麻酔の注射をしますが、出来るだけ痛みを減らしたい場合は、術前に麻酔クリームを塗布することも可能です(その場合は事前にクリームを購入していただきます)。麻酔の後で、切開を行い、皮弁を立ち上げ、剥離します。皮弁を裏返し、裏に付着しているアポクリン腺をハサミで切除していきます。
その後に皮弁を戻し縫合処置、圧迫固定という段取りになるのですが、この手術の最大のポイントが術後の血腫予防です。術中に止血をしていても出るものです。腋窩は陥凹している場所であり、圧迫固定には工夫を要します。手術を行う外科医は、それぞれの経験から、その人なりの圧迫固定を行っていると思いますが、当院では被覆材を用いた固定法を現在は行っています。これを用いるようになって、術後血腫で困ることが無くなりました。もちろん内部に血腫を形成しないようにペンローズドレーンというチューブ(毛細管現象で血液が外へ排出される)を数日間は入れておきます。
抜糸は1週間ほどで行いますので、患者さんご自身で処置を行ってもらうのにも好都合です。この被覆材を縫合固定しますので、一部潰瘍を形成することもありますが、毎日洗浄してもらって外用剤を塗布するだけで、ほぼ改善していきます。そして抜糸後は、それまでとは逆に腕を十分に動かしてもらいます。動的状態の中で、創部を安定化させるということが大切になります。あまり過保護的に動かさないでいると、創部が固定・拘縮した感じになりますので、そこを理解していただきます。手術を受けられる年齢は10代の方から、50歳前後まで様々ですが、ほとんどの方から、臭いが気にならなくなったというお声を頂きます。やはり物理的に腺を切除するという方法はオーソドックスですが、確かな方法なんだろうと思います。外来での手術ですので、片方ずつの手術になります。抜糸までの1週間という期間がダウンタイムと言えばそうですが、保険も適応される手術ですし、最終手段という意味合いもあり、治療法の1つとしてご理解いただければと思います。
2023年03月05日 21:58