今日は、床ずれの話です。どこの病院でも床ずれ、いわゆる褥瘡対策はいろいろと施されています。今では高齢者を診る医師には必須の知識と経験かと思います。

ただ、今回のお話は少し違います。今回当院に来院された患者さんは、ご家族の方がこの「床ずれ」を発見して来院されました。幸い、床ずれそのものはまだ深部まで潰瘍形成しておらず、除圧などのケアや処置をされたら悪化しないのではというレベルでした。通常の皮膚科であれば、それで終わりになるのかと思いますが、私が総合内科医で認知症を診ているという経緯から、ここでは終わりません。

よく考えてみてください、普通に生活ができるレベルの人に床ずれができるのでしょうか?という話です。痛みが出たら寝返りなどしますよね。そこで血行が再開するため不可逆的な床ずれまでは普通はならないわけです。一言二言会話をすると、「この方は認知症の関与が大きいな」というのがわかります。それは意識の覚醒度が低下している事が如実にわかるからです。認知症診療には必須のスキルです。認知症診療にはこのパット見て、パット判断するという第一印象での診断が非常に大切です。認知症診療といえども経験が必要とされるというのはここです。意味もなくカルテや机を触っている様子、車いすに座っていながら頭が傾く様子、そのような状況からいろいろと察知していくわけです。今回の患者さんもこちらから家族の方へ認知症の話題を投げかけなかったら、そこで終わりになっていました。お話を聞くと、「骨折してから整形外科に長年通院していましたが、物忘れが出ているなあという気はしていました。しかしどうしたらいいのかよくわかりませんでした。」とのコメントでした。認知症ではよく行う長谷川式スケールという検査をすると、結果は明らかな認知症。それも中等度から高度。一連のストーリーを考えてみると、この骨折ももしかしたら認知症が関わっているかもしれないという読みまでできます。意識の覚醒度というのはそれほどまでに非常に大切です。

患者さんが高齢になればなるほど、医師の疾患への総合的スキルが要求されます。私が感じるちょっとした視点、そしてちょっとした一言、それらから再度ご高齢の方と一緒に生活されているご家族の方々に、もう一度「家族の進み方」を考えてもらえたら幸いです。