今日は、また認知症の第3弾です。まだまだ認知症治療研究会第5回の前なんですが、今回当院通院の患者さんの症例で、みなさんに提示しておくべき例がありましたので、第3弾として書かせていただきます。個人ブログの方には、また私の視点なりを今後書いていく予定ですが、総論的な話をこちらに書きます。

実は、今年最初のブログで、認知症の話題を書かせていただいた中で、「あまり公的な方の介入を過剰に行うべきではない」と書きました。そして今回それと大きく関連する患者さんの例が出ましたので、ご一緒にみなさんに考えてもらいたいと思い提示します。

その前に、厚労省が高齢化社会の中で、包括支援という構想を打ち出していて、それをシェーマにしますと、以下のようになります。パッと見ると、素晴らしいなあと見とれてしまいそうになります。この構想を見るともう十分だろうと思いそうになりますが、現場力、患者さん目線という意味では問題があります。

まずは当院の患者さんの例を提示します。その前提で私がすでに7年以上コウノメソッドという認知症の治療方法を行っており、ある程度、認知症というものがどういうものかということを現場目線で見てきている経験があるという事が大前提になります。患者さんは当院まで歩いてこれる距離で、現在歩行も問題なく、その患者さんの親戚の方から「少しボケてきたのか、家がごみ屋敷みたいになっている。」という相談があり、本人に問診の検査を行い、近位で頭部の画像検査も行い、さらに身内の方にも「前頭葉症状が強く出ており、物忘れそのものの進行を抑える薬も適宜使っていきましょう」とお話をしていました。その後、地域包括支援センターの職員の方が「ご本人さんの認知症の件でお話を聞かせてほしい」とのことで来院され、当院で行った検査から、前頭葉の症状が出ているため、抑制薬や中核薬を適宜使ってやっていく方針である事などをお伝えしました。私はそれで包括支援センターの方にも理解していただき、近くにお住まいの親戚の方もまずは安心していただけたと思っていました。

ところが問題はここからです。

まずは結果を申し上げます。しばらくこの患者さんが来院されてなかったので、どうされているのかな?と思い、親戚の方に連絡をとってみると、「地域包括支援センターの方が来られて、ご家族と話をして、遠方の精神科の病院まで受診をし、今は車で送り迎えなども含めた介護支援を行っていると話されてました。」との話でした。すでに慢性の内科疾患で私がフォローしていましたし、認知症についてもまだしばらくは外来フォローが十分可能な状況にもかかわらず結果がこれです。さらには、親戚の方からお話を聞くと、本人はわざわざそんな遠方の病院まで行きたくないと言っていたという話まで出る始末です。まだ料理も自分でなさっており、私と診察室では会話が十分できるレベルなのにです。

私はこの地域包括支援という構想が出る前から認知症を観てきていますが、認知症の患者さんをフォローする上で、鍵になるのが、当事者と周囲の方(ご家族や親戚などのキーパーソンと言われる方々)との関係です。現在もそうですが、車で遠方から受診される場合というのは、すでに通院されている認知症治療に疑問を持たれている場合や、ご家族がもっと改善してもらおうと親身になって治療を探されている場合が多いのです。施設やどこかの病院に丸投げのような感じの方はおられません。しかし先程の関係性が悪く、疎遠な場合は認知症フォローがよからぬ方向へ動き出すこともあるのです。そして、物事は専門家と言われる人たちによってさらに動かされることになります。なぜなら当事者もご家族も認知症というものを理解されていない場合が多く、専門家の言動に大きく左右されてしまうからです。

今回の地域包括支援センターの方々の動きから、当院の患者さんが振り回されたのもこの一例です。さて、これからもう少しこの問題にメスを入れていきたいと思います。私は総合内科専門医でもあり、以前は学会などで症例報告というのをやっていました。たかが一例ではあっても、その中に医学の本質を物語るいろいろな事が見えてくる場合があります。それと同じように、今回の地域包括支援センター問題から見えてくるものがあります。そこにフォーカスを当てていきたいと思います。頭で考えている事と現場・事実のギャップです。その中から何が大切かが見えてきます。